2014年09月13日
人はなぜ中森明菜に嵌るのか?(3)

小学生に「中森明菜ってなぜ人気があったの?」と聞かれたらどう答えましょうか?分かり易く言えば「歌がうまくて可愛かったからよ。」ってなりますね。これだと1行もかからない。
アイドルとしても飛びぬけて可憐だったのですが、歌はアイドル離れしていた。もちろん人はそれぞれなので、歌唱力は聖子の方が断然上だという人も多いし、岩崎宏美や大橋純子や高橋真梨子だって歌は抜群にうまいですね。でもこの「歌唱力」というのが曲者で、いろんな要素からなっているので、そのどれに比重を置くかで評価も変わってくるのです。

歌唱力の第一の要素は音域です。例の何オクターブ声が出るかというものですね。松田聖子さんは自称2.5オクターブですが、実際は1.5くらいです。中森明菜は更にやや狭い。マライヤ・キャリーは5とか7とか言われていますが、それくらいになると、声というより音になってしまって、意味を伝えることはできません。大切なのは音域ではなく「声楽的声域」なのです。声域が広いとそれだけ多くの歌が唄える。この点では明菜はハンデを負っています。
歌唱力の次の要素は声量です。これは一流の歌手であればみんな声は良く出ます。肺活量、発声法、呼吸法の問題なのである程度訓練で増加させられるし、少ない息で大きく響かせることもできるでしょう。明菜さんはデビュー後数年はよく声がでていました。どこまでも伸びる透明感のある高音、深みのある低音、また全体としてほんのりとした甘さが掛かっていて、とても魅力的です。
デビュー曲の「スローモーション」は十分に練習を積んで完璧に仕上がった状態でした。最初のステージから声が良くでていました。しかし、急に方向転換をした「少女A」では曲が速すぎるのと、練習不足で最初のうちは声はでていません。「セカンドラブ」でもマイナーコードの連続のこの歌の最初の部分はステージではうまく唄えず、ベストテンに6位で登場したころに漸く仕上がりました。音を探しながら唄う必要がないので声は良く出るようになりました。 「1/2の神話」以降は声が良く出ており問題ありません。この時点であらゆる意味で実質的にはアイドルを卒業しています。
https://www.youtube.com/watch?v=hg6YumCyP_c
http://www.dailymotion.com/video/xgb0i5_%EF%BC%91-%EF%BC%92%E3%81%AE%E7%A5%9E%E8%A9%B1-%E4%B8%AD%E6%A3%AE%E6%98%8E%E8%8F%9C-%EF%BC%92_music
歌唱力の次の要素は「声質」です。人間の声帯と体は音叉ではないので、同じ「ア」でも複数の音が合わさって、複雑な波形で出てきます。「音色」といってもいいのかもしれません。これは声の個性、深みとして認識されます。ハイファイセットの山本潤子さんは上品でセクシーな美声ですね。これには誰も適わない。一方声量が豊かで音域が広くても、平板な声があります。申し訳ありませんが、MayJさんや氷川きよしさんは声に深みがあるとはいえません。「アナと雪の女王」の「ありのままに」でMayJさんと比較される松たか子さんの声には深みがあります。これが人気の違いです。絶叫も変な「泣き」もなく、微かに甘い美声です。
中森明菜の声には高調波(倍音)の要素が多く含まれているといわれています。同時に多くの音を出しているわけですね。ワーナーパイオニアは素晴らしいことに彼女の絶頂期のほとんどの曲の音源をハイレゾルーションでマルチで(複数の楽器チャネルに分けて)持っています。普通はないことなので、中森明菜に入れ込んでいた職人がいたということでしょう。ハイレゾ用の機器を買って、ハイレゾ処理のCD(売っています)を聞いてみたいですね。数万円掛かりますが。
歌唱力の要素の大きなものとして歌唱法が上げられます。どういう唄い方をするか、どういう声の出し方をするかということですね。中森明菜はデビュー前に1年足らずの間ですが、みっちりとボイストレーニングをして、癖のない唄い方を身につけています。デビュー曲の「スローモーション」では体がちょっと太めだったので歌はよくてもあまり売れませんでした。歌が下手で。か細く可愛いという当時のアイドルの定義からは少しはみ出ていたのです。
歌唱法と表現力については次回。

セカンドラブが大ヒットしてから太り始めました。コラーゲン、プリプリでございます。

これ唄い終わって「微笑まなきゃ」と思っているところ。彼女にとって微笑むとはこういうことで、このお多福顔がある間は幸せに包まれていましたね。
Posted by Sophiee Winkler at 11:42│Comments(0)
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