2010年07月15日
タコで十分
サッカーのW杯は終わってしまいました。日本はベスト8には入れなかったけど、十分に国民の期待に応え、ある意味大方の予想を裏切る健闘振りでした。選手、監督を始め関係者の方々はご苦労様でした。
さて、一時の興奮も醒め国内でも専門家を中心に冷静な分析が始まっています。殆どの評論家がグループリーグ突破を予測できなかったことから、監督に土下座しろなんていう、これまた多分俄かサッカーファンらしき無責任な声が聞こえても来ます。しかし、やはりそれくらい関係者を困惑させるような、バタバタした、結果オーライの岡田監督の指揮ぶりでした。
今回日本のチームとして予想外に実力を出し切る結果になったので、その分将来への課題も明らかになってきたように思います。それを素人である私なりにまとめて見たいと思います。
(1) 攻撃力はやはり弱かった
日本の伝統なのかと思えるほどに、今回も攻撃力は弱かったですね。一つには個人技の低さ、ボールキープ力、ドリブル突破力、トラッピング、ロングボールの精度、PKの精度といった点です。シュートしないで得点しようと思っているかのようなシュートの少なさです。これを分析していけば、トロトロしていて詰められてコースを消される、自分で行かないで味方に渡そうとする、トラップが下手でシュート体勢に入るのに何秒か掛かってしまうというのがあるでしょう。さすがに本田はこれらの問題はほぼ克服できていましたね。世界が認める所以です。
(2) 身長が低いと攻撃パターンが限定される
日本は4バックで両サイドを走らせてクロスを放り込んだり、さらに深くを抉ってセンタリングを上げるという攻撃を目指しているはずです。しかし、相手ゴール前の味方フォワードの身長が低いとこれらのパスが跳ね返されてしまう確率が増えてしまいます。実際パラグアイ戦では遠藤のFKを始め、何本かのサイドからのロングパスが中に入れられましたが、悉く跳ね返されてしまいました。パラグアイは決して高身長とはいえないけれど、ゴール前には背の高いまた、ジャンプ力のある選手を配していました。
体が小さいと結果としてドリブル突破力は小さくなります。長友や大久保が頑張っていたように見えますが、ドリブルで最後まで突破していくことは出来ずに、途中で攻撃の芽を摘み取られていました。シュートの技量も低かった。
闘莉王や中沢を毎回敵のゴール前まで上げて貼り付けておくことはできません。それよりもディフェンスはディフェンス、ストライカーはストライカーとはっきり役割を果たさせるために、フォワードは185cm程度以上の者を2人は揃えるべきでしょう。
今回の日本の攻撃は相手ゴールの中央を避けるか、FKによって身長差のハンデを減らすかして得点を上げたものが多かったと思います。そのためにはカウンターからの速攻になるしかないので、これに中村俊輔や遠藤の「ためをつくるサッカー」がマッチしないで、機能しなかったと思います。相手ディフェンスに詰められる前に早く動く、縦パス主体のサッカーに切り替えたことで、最後の最後でW杯レベルのサッカーに迫ることができたのです。
(3) フィジカルコンタクトは大幅に改善した
遠藤と中村俊輔を除いてはちゃんとボールを取るために目の前の相手に当りに行くようにしたので、高い位置からのプレスが奏効し何とかボールを取って攻めに転ずる場面を演出することができました。これがちゃんとできる選手は阿部、稲本、長友、松井、長谷部、大久保、本田ですね。逆に相手に接触したくないと言う意味では玉田が典型的なプレーに終始していました。彼は最後まで自分のプレーをJリーグレベルからW杯レベルにシフトすることができませんでした。今後もそのままでしょう。どこにいて何をやっているのかよく分かりませんでした。
(4) ディフェンスにも問題は多く残る
日本のディフェンスは鉄壁だ等と喚いているファンや専門家も多いようですが、そんなことはありません。相手のシュートやパスをただ跳ね返しているだけのことが多いので、結局はボールは拾われ攻撃は続いてしまい、最後にマークがずれて得点されてしまいます。
デンマーク戦ではトマソンに何度も綺麗にマークを外されていました。パラグアイ戦でも9番に何度も外されて危ない場面がありました。
長谷部はペナルティエリア内で3つのファールを犯し、2本のPKを取られました。そのうちのハンドの1つは審判が見落として事なきを得ました。小さな体で頑張っていると思いますが、味方キーパーにとっては闘莉王とならんで脅威です。サッカーは口で恰好いいことを言うだけの競技ではありません。
今回は不用意なバックパスからの失点というお家芸が無くて、その点で進歩したことを認めます。
(5) PKをいい加減に位置づけているチームは負ける
決勝トーナメントではPKになる確率がかなりあります。別にその場になって肩を組んで跪かないでもいいので、日頃からしっかりと練習しておきましょう。英語の試験で言えば発音とアクセント、文法問題といったところで、確実に点を取ることのできる分野です。「PKは運だ」をというのは誰かを慰めるために言ったのでなければ、自分のセンスの悪さを告白しているにすぎない愚かなコメントです。そんなこといえば、試合に負けたときに「サッカーは運だ」とか「人生は偶然だ」というのも許されることななります。
(6) 過去のパターンを踏襲すると
4年後のブラジル大会を目指して岡田監督を再任する案も出ていますが、今回の彼のチームマネジメントは酷いものだったと思います。選手の特性をあまりよく把握していない部分があるし、何年もの時間を空費したという点は否定できません。グループリーグ突破のその先のサッカーが彼には描けていないと思います。
(7) トルシエに戻った?
結局今回やったことは過去にトルシエ監督が指導していた、フィジカルコンタクトを激しくして挟んでボールを取る、運動量で圧倒する、強い心、うまくファールし、またファールをもらうズルいプレー、縦の速い展開といったことに符合しています。彼の場合は攻撃のアイデア、形がないと批判されていましたが、それは今も同じなので、結局は10年以上掛かって同じところにいるということになります。
(8) 最後は個人技
決勝トーナメントでは最後のところは個人技の差が出ます。スペインの中盤以降の速いパス回しは個人の技術に大きく依存しています。その面の改善がないのに形だけ真似ても、もとのコチョコチョしたサッカーになってしまうでしょう。個人の技量を高めると同時に、日本に合った組織的な攻め方を開発する必要があります。両方が必要です。始めから個人技の向上を諦めているのが今の日本です。監督に全部放り投げるのではなく、協会もしっかり考えて欲しい。
(9) マスコミ・評論家はもっと成長を
岡田監督はベスト4を目指すと公言していたのだから、「あれはどうなったのですか?」と尋ねるマスコミがいてしかるべきです。でも誰も追及しませんね。そんなものは建前だったし、だれも信じていなかったということです。日本中のこの曖昧さが日本のサッカーの実力向上を阻んでいると思います。はっきりとした主張をすることはリスクを伴います。3戦全敗と予言してそれが外れたからといって、口をつぐんでしまって真実を述べないのであれば、そんな評論家は不要です。タコで十分。
Posted by Sophiee Winkler at 11:30│Comments(0)
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